その目から見る世界


東京旅行の最終日に同行者と一旦別れて、数か月ぶりに部活の同期男子に会った。
2k540 AKI-OKA ARTISAN」に行ってみたいと言っていたので、お昼前に秋葉原の改札で待ち合わせした。
いつも通りのシンプルな服装や眼鏡、細長い手足、少ない荷物、7年前からほとんど変わってない彼を人ごみの中でなんとか見つけ出して、並んで歩いた。歩調をこっちに合わせてくれるようになったのは、意外と早い時期からだったなぁとか思いながら。
何気ない会話をしながら目的地に向かったり、彼の説明を受けながら各ショップを回ったりするあいだ、私は頭の片隅でずっと、今日話さないといけないことを整理していた。
東京に来る数週間前に届いたメールには、精神系の病気というか障害の名前が記されていて、「僕はそれかもしれない。悪いけど、ちょっと勉強して、コマから見て僕がどうなのか教えてほしい」みたいなことが書かれていた。彼の性格上、人にそういうことを相談するってことは、たぶんそれまで数年をかけて考え抜いてきたってことだから、とりあえず「分かった」とだけ返して、言われたとおりに勉強した(と言ってもネットで調べたり、人に聞いたりした程度だけど)。
もちろん、ド素人の私が安易にそんな判断ができるわけがないし、してはいけないことも分かってた。けど、それはきっと彼も分かってるんだろうと思った。分かってる上で、ド素人の私に聞いてきたんだろうと思った。
勉強し始めてすぐ疑問に感じたことは、「個性と障害の境界線ってどこだ*1」ということだった。確かに、彼に当てはまる部分は少なからずあるように思えた。けど、それが個性の域を脱してるかどうかなんて、それこそ誰にも分からないんじゃないのか?と思った。
私はこういうことに関して、彼に嘘はつけない。それが彼に信頼されてる理由だから、いつも意識的に本音で話すことにしてる。だから今回も、このまま伝えるしかないな、と思った。それで、一通りショップを回ってお昼を食べに入った定食屋で、本当にそのままの言葉で伝えた。
そしたら彼はちょっと笑って、「そうやろ、分からなくなるやんな」と言った。それから、「もし僕が本当にその障害なら、治すというか改善する方法もあるらしいから、それなら知りたいやんか」とも。
勉強してるあいだずっと私が抱いてた『障害かどうかなんて知ってどうするの?嫌な言い方かもしれないけど、再就職も難しくなるかもしれないのに』っていう下世話な疑問は、そこで砕かれた。彼はきっと、仕事を解雇されてふりだしに戻ったこの時期に、私が思うよりもずっと根本的なところまで潜っていって、探ってるんだと思った。

そのあと、カレーを頬張りながら「そういえば来月奈良に帰るよ。もうこっちのアパートの退去手続きも済んだよ」と軽い感じで言われて、私は豚の生姜焼きを吹き出しそうになった。
仕事を解雇されたから地元に帰るわけで、決して喜ばしいことではないけど、私は勝手に嬉しい。早く帰っておいで。今度は奈良で会おうね。

*1:もちろん障害も個性の1つだとは思うけど、これしか表現が思い浮かばない。