変なサンダルを買った。
髪は黒くて長いほうがいい、ジーンズの下にパンストは穿かないほうがいい、恋人はこれくらいしか口を出さないし、もし私がもっと髪を茶色くしてもショートカットにしても、ジーンズの下にパンスト穿いても(っていうかよく穿く)、結局は「あーぁ…」って溜息をつきながらも許してくれるんだろう。でもなるべく溜息はつかせたくないから、自分がしんどくならない程度に努力もする、それくらいでちょうどいい。
本当は、前の彼氏だって、大学時代にずっと好きだった先輩だって、私がどんな格好をしても気にしなかったと思う。でも今にして思えば、彼らが思い描く「理想の女の子」を勝手に想像して、背伸びしてた気がする。自分のテイストに混ぜようとして、それが楽しいと思える時期も確かにあった、でもそれはもともと私が好きな感じではないから、いつも少しずつ辛かった。
自分とは全然違う女の子が、影みたいに彼らの後ろに見えた。前の彼氏のときは実際にそういう女の子が背後にいたんだから、もっと悪い。

誰にでも理想の異性像っていうのはあって、でも今の恋人といるようになって初めて、「そういうのが好きなんは分かるけど、私はこんなんやで」みたいなことをへらへら笑いながら言えるようになった。ごしごし垢を落としてもらったような感じ。
もしも恋人と別れることがあって、また誰かと恋を始めたりするなら、その時ちゃんと思い出したい。
世の中の流行に乗ってなくても自分にとって心地いい格好ができて、それで彼の隣を歩いても心もとなくなったりしないかどうか。街中で、今風の可愛い女の子を見たとき、惨めになったりしないかどうか。彼より私のほうがたくさん食べても、「よう食うなー」って笑い合えるかどうか。自分がどういう人を好きなのか、この年になってやっと分かってきた気がする。