奈良にいると、自分がのびのびと過ごしてるのがよく分かる。ありえないくらい食べるし、大口を開けて笑うし、明るい浴室で背中を洗い合ったりもする。
遠回しに思わせぶりなことを言う悪い癖も随分ましになった。
恋人やハチはたまに「コマが必死で隠そうとすることは大体たいしたことないやんな」って言うけど、たぶん本当にその通りなんだと思う。
たとえばいつか離れなきゃいけないことがあったとしても、彼らに治してもらった歪みは、もう二度とあの方向には曲げない。できるだけ真っ直ぐなまま保つ。忘れそうになったら思い出す。すごく辛かったあの時、2人はまるで灯台みたいに見えた。
このあいだハチに「おまえの適当さは俺と似てるから、アイツと合うと思った」って言われた。たしかにハチの考えることは、私がもし男に生まれてたら同じようになってただろうなって思うくらい、感覚としてよく分かる。
遠い未来のことを考えるのは好きじゃないけど、考えざるを得ないくらい、大切なものができた。こうやって増していく重みなら悪くないなと思う。私はずっと何かに繋ぎ止めてほしかったのかもしれない。